犬山に行けば「必ずカワイイ写真を撮影できる」ブランドを確立した城下町。
3年前までは「猫も歩かない街」と地元の人が表現していた小さな城下町が、竹下通りに匹敵するほどの大賑わい。写真撮影しながら食べ歩きを楽しむ女子が溢れるほどの「女子旅のまち」になった。その起点は2011年に三光稲荷神社の宮司になった水谷守さんの決断。2012年に三光稲荷神社の中にある「姫亀神社」の絵馬をピンクのハート形に変更した。同じ頃、城下町の「茶処くらや」が、カラフルな「恋小町だんご」を商品化。少しずつ若い世代に知られるようになっていった。観光客が増え始めると、かつては15軒にまで減少していた城下町の商店街に、店が戻ってくるようになった。
流行語大賞に「インスタ映え」が選ばれた2017年に犬山は大ブレイク。ハート形の絵馬や「恋小町だんご」をはじめとするフォトジェニックな食べ歩きフードの写真がSNSを通じて拡散。レンタル浴衣店が開店し観光客自身がカワイイ被写体になることで観光客が急増した。いまや、街を挙げてフォトジェニックな商品開発が進み、多くの店には行列ができている。
その背景には、犬山市の「文化の薫り高い」街の歴史がある。犬山市には2つの国宝がある。国宝犬山城は唐破風の洒落たデザインが特徴。日本最古の現存天守閣。名鉄犬山ホテルの敷地内にある日本庭園・有楽苑には国宝茶室の如庵。また、犬山まつりはユネスコ無形文化遺産に登録された国内33件の「山・鉾・屋台行事」の一つ。地域に根差した美意識が、現代のSNSを通して、新しい切り口で花開いた地域ブランドといえよう。
地域づくりプロデューサー 石井和裕

城下町から天守閣を望む。

ピンクのハート形絵馬は女子に人気。

老舗蕎麦屋の天ぷらもカラフルで立体的な盛り付け。