menu

観光に役立つとは限らない世界遺産

世界遺産登録の本当の意味とは?

諮問機関がユネスコに対して、古代遺跡「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」を世界文化遺産へ登録するよう求める勧告をした。沖ノ島は「海の正倉院」と呼ばれる文化財の宝庫。沖ノ島は島自体が御神体となっており、沖ノ島から最も近い大島の「沖津宮遥拝(おきつみやようはい)所」(写真)から沖ノ島を拝む。

福岡県内では勧告当日の新聞の論調が「残念だ」になっていた。4遺産が登録対象から除外されたからだ。指定された沖ノ島は神の島で立ち入り禁止の私有地で観光客は入れない。つまり、沖ノ島以外の場所が除外されると観光客誘引の効果が限定的になるというのだ。しかし、世界文化遺産の本来の趣旨では観光効果は考慮されていない。「考古学的物証があり、普遍的価値があるモノ」を保護するために指定される。文化財保護は観光開発とは逆方向の活動。つまり、本当は世界文化遺産と観光とは相容れない面もあるのだ。実際のところ、世界文化遺産が最も話題になるのは登録のときであり、観光客の増加に効果的だとは限らない。過去の例を見ても、登録一年目の観光客は飛躍的に増加するが二年目に激減するケースがある。

とはいえ、地元では新聞の一面を飾ったように、大きな話題になっている。シンポジウムやイベントの開催回数も増えた。地域住民にとっては「地域が守ってきた宝が世界に認められた」大ニュースであることは間違えない。

世界文化遺産は地域資源を守る文化財保護と地域住民の誇りの醸成には大きな効果があるのだ。

都市農村交流課 プロデューサー 石井和裕

18342433_10154322944486415_8531911357183378352_n

沖津宮遥拝所

沖津宮遥拝所

旧日本軍の砲台跡から水平線の沖ノ島方向を望む。

お電話でのお問い合わせ

03-5232-6866

WEBからのお問い合わせ

お問い合わせフォームへ

関連記事

  1. 「トライからミライへ」タグラインが伝えるブランド

    過去の歴史を大切にし、未来へ伝える「高麗の郷ブランド」。天皇陛下が私的旅行で訪問されたことで注目…

  2. クリスマスイルミネーションで地域を表現

    富士山は誰のものかを主張「富士山論争」というものがある。山梨県が「富士の国」を自称し、静岡県は「…

  3. 都心で食情報を発信する

    飲食店は情報発信の起点となる。地域の食の魅力(地域ブランド)を、どのような方法で消費地である東京…

  4. ゆるキャラ集合で広域連携を伝える。

    ゆるキャラ大集合イベントが興味を喚起する。自治体単独ではなく、複数の自治体が合同で地域ブランドの…

  5. 地域づくりはコミュニティづくり

    街づくりの集大成は神社の復活だった日本橋が変わった。平日はビジネスマンが行き交い、休日は百貨店に…

  6. 「自分のまちは自分たちがつくる」という市民の約束

    鯖江市民主役条例が創る地域ブランド鯖江市は眼鏡産業が盛んで100年以上の歴史を積重ねてきた。眼鏡…

  7. 良き伝統を次の世代に結ぶ小江戸の人材育成

    蔵の街は市民の力で維持されてきた。埼玉県川越市は、明治時代の川越大火にも耐えた蔵が多く残っている…

  8. 地域にオンリーワンを見つけ出す

    「女子サッカー」というマイナー競技であっても市のシンボルになる理由とは?全国には約1,700の市…

PAGE TOP