自然豊かな田園風景が広がる景観を地域の価値に。
川島町は、埼玉県のほぼ中央に位置する田園風景が広がる自然豊かな町。都心からのアクセスも良好で、関越道練馬ICから圏央道川島ICまでわずか24分の距離にある。駅はなく、大型観光施設があるわけでもない。いわゆる首都圏近郊の都市型農業がおこなわれている地域だ。
川島町は「KJブランド」を定めている。「KJブランド」 は、「自然(見渡す限りの田園風景、白鳥の飛来など)」、「農産物(いちご、いちじく、川越藩のお蔵米など)」、「食(すったて、呉汁など)」、「歴史文化財(遠山記念館、廣徳寺大御堂など)」などに代表される地域資源を町の魅力として地域住民が再認識し、地域の誇りの象徴として、また町外に対する認知度向上、「訪れたい」、「買いたい」、「住みたい」と思えるような町のイメージを図ることを目的にした価値提供基準。田園風景をブランド価値に盛り込んでいる例は珍しい。
埼玉県川島町でインスタ映えポイントを周る、日帰り女子旅ツアーを開催した。そのため川島町は、仕事に疲れた都心のOLをターゲットとし、田舎のインスタ映え風景と癒しを訴求して、集客し、ツアーを実施した。ツアー内容としては、役場の展望台から町を一望、醤油工場の見学、昼食として川島名物のすったて、史跡の見学、トマト農園の見学、最後にカフェで一息、と文字に連ねると何のことはないツアーに見えるだろう。
しかし彼女達はそのありふれた場所場所で目を輝かせ、スマホ片手にパシャパシャと写真を撮り出すのである。話を聞くと、「都内にはこんな写真が撮れる場所はない」、「友達に自慢できる」、「田舎風景が良い」、など楽しんでいる返答が返ってくる。もちろん、地元の人は予想だにしていない返答にビックリだ。
彼女たちは、普段都内では見ない田舎風景、地元人では意識もしていないポイントに、インスタ映えを見出しているのだろう。田園風景をブランド価値と定めることに、ここで生活する地元の人々、誰もが納得したわけではない。まだ、自慢の風景にはなっていない。しかし、彼女たちの反応で地元の人に気づきを与えることができれば、地元の意識も変わってくるのであろう。
都市農村交流課 プロデューサー 小笠原 雅浩