menu

武蔵小杉人気の根底に残る土地の記憶

高価格帯のタワーマンションがここに建つ理由があった。

タワーマンションが建ち並ぶ武蔵小杉は「住みたい街ランキング」の上位常連となっている。10年前までは、まだ大手電機メーカーの工場の街という印象が強かったが、今では、すっかり「憧れの街」だ。武蔵小杉が急速に発展した理由として、都心からの移動時間が短い、3つの路線を使用できる、工場跡地に最新の大型マンションを建築できた…等々があげられる。それと、もう一つ、地元である「神奈川県民からの支持を得ている」という点も重要だ。特に神奈川県の未婚正社員女性が熱烈支持を受けている。

全国各地でシティプロモーションが展開されている。重要なのは、地元の住民と近隣地域の住民が、その地域を自ら推奨してくれるかどうかという点。予算を投下して、シティプロモーションのための広告展開を継続することは難しい。だから、シティプロモーションの多くの第一歩は「地元の合意形成」に充てられることが多い。

武蔵小杉が地元から支持を得ている理由の一つとして、土地の記憶がある。じつは、この地域は由緒正しく品のあるありがたい土地として、代々の住民に語り継がれてきているのだ。その痕跡の一つが「小杉御殿町」という地名。武蔵小杉には、徳川家康が鷹狩りの休憩に滞在する御殿があったのだ。それゆえ、川崎市内でも、他の地域とは違った歴史を歩んでおり、タワーマンションの建築ラッシュに至る以前から、特別な場所とされていた。

過去のこととはいえ、代々に語り継がれる土地の記憶は、現代でも地域のブランド価値に大きな営業を及ぼしている。武蔵小杉は、タワーマンションが建設されたから高い価値を生み出したというよりも、地元の支持がある高い価値のある地域だったので、高価格帯のタワーマンションを生み出したといえる。それゆえに、地元の住民の推奨を受けやすく「住みたい街ランキング」の上位に躍進した。川崎市が、地域ブランドを語る際に、武蔵小杉のブランド価値を最大限に活用することは理にかなっているといえるだろう。

都市農村交流課 プロデューサー 石井和裕

徳川家康が鷹狩りの休憩に滞在したと伝えられる西明寺。

小杉御殿町の脇にある西明寺参道に建つ小杉御殿の碑。

お電話でのお問い合わせ

03-5232-6866

WEBからのお問い合わせ

お問い合わせフォームへ

関連記事

  1. アンテナショップよりも効率的な首都圏戦略がある

    なぜアンテナショップではだめなのか?鹿児島県長島町は人口10,921人(平成28年1月1日現在)…

  2. 地域ブランドの浸透に重要なキャラクター選択

    地域の強みを具体的に示す「ゆるくない」キャラクターとは?観光においても地域ブランドづくりは重要性…

  3. 地元を想う高校生が地域産品を開発

    「課題研究」授業が地域に活力を与えた関東の最東端に位置する千葉県銚子市は日本随一の漁獲量を誇る漁…

  4. 商店街の顔をつくり回遊を促進する手作り催事

    古くからの商店街がアートの街に変身した。深川資料館通り商店街は地下鉄大江戸線清澄白河駅がある清澄…

  5. 地域にオンリーワンを見つけ出す

    「女子サッカー」というマイナー競技であっても市のシンボルになる理由とは?全国には約1,700の市…

  6. 賑わいをブランドに

    渋谷では若く新しいカルチャーとの多くの出会いが「約束」されているブランドは「約束」という単語で言…

  7. 選択と集中で「いちご日本一」のまちへ

    真岡市の石坂真一市長は2017年5月15日に就任記者会見を行い、日本全国のイチゴ生産者を集めた交流会…

  8. 観光にまで大きな効果を及ぼす新たな地域産品ブランド

    地域産品ブランドが地域活性化に役立つ青森には大小さまざまな酒蔵がある。しかし、今や、青森の酒と言…

PAGE TOP