地域の歴史を守り伝える風光明媚な景観
兵庫県神戸市垂水区の舞子エリアは長い歴史のある景勝地。明石海峡の向こうに淡路島を望む。平安時代から歌に詠まれ、平清盛が宴を催したという言い伝えもある。江戸時代の旅行案内には松並木を行き交う人々が描かれ、後に明治時代から大正時代には有栖川宮御別邸をはじめとする別邸・別荘が多く建てられた。1950年代には「東洋一の臨海公園」として宣伝され、その名は全国に知れ渡った。日本全国に「舞子」という地名が存在するが、その多くは、景勝地として人気があった「舞子の浜」にあやかった命名と言われている。
近代化、道路の拡張、明石大橋の建設等で多くの松原は失われたが、このエリアには、今もリゾートホテルやレジャー施設が建ち並んでいる。そして高級住宅地としても知られている。その象徴として、この地域が古くからの景勝地であったことを象徴する松林と砂浜を復活し、歴史ある建物が舞子公園に移築されている。また、神戸市は、神戸市都市景観条例に基づく都市景観形成地域等に指定し景観を維持しながら、風光明媚な舞子や明石海峡大橋等の景観を生かした駅前立地の住宅の供給を計画している。
放置すれば失われがちな地域の力は景観と象徴的な建物の保全によって維持されている。
都市農村交流課 プロデューサー 石井和裕

舞子海上プロムナードからの眺望。松林の向こうに有栖川宮邸跡地のリゾートホテル。砂浜が見える。

明石大橋の脇に移築された神戸の貿易商・呉錦堂が建てた別荘・移情閣(孫文記念館)。