個人旅行客への対応で伝統の小売スタイルを維持
京都は優れた食文化の歴史を持っている。京都市民からは「にしき」という愛称で呼び親しまれ、「京の台所」として京都の食を支えてきた錦市場は400年の歴史を誇り、京料理の材料なら大体そろうとまで言われた伝統の商店街。そんな錦市場も近年、客足が伸びなかったという過去を持つ。原因は団体旅行の減少や食の多様化による環境の変化など時代の移り変わりだった。
人を立ち止まらせるにはどうすればいいか。団体旅行の減少に対して、錦市場がとった施策は串やカップで料理を提供し、「食べ歩き」を可能にすること、また錦市場で購入した食材をその場で食べられる調理サービスのあるイートインスペースの設置という、個人旅行が主流となっている現代の旅行スタイルに合わせたものだ。観光客に、ゆっくりと歩いて、商店街の隅から隅までを回遊してもらい、飲食を楽しんでもらうことで、より観光客に商品と接してもらう時間を増やすことを狙った。
各店が商品の提供方法を変えたことにより、錦市場は個人旅行の観光客の滞在時間を延ばすことに成功した。また、訪日外国人にも伝統的な人気観光スポットとして知られるようになり、常に賑わいを保っている。伝統を守りつつ現代のニーズを取り入れる。新しい風を取り込むこともまた伝統を守るのに重要なのではないだろうか。
インターン研究生 田中晴也

食べ歩きサイズの商品が並ぶ。多言語化対応も行われている。