なぜ「富士山が見える」は強みにならないのか?
地域の特徴や強みを何にすえれば移住に相当する魅力的な地域に見えるか?ワークショップ等のディスカッションを通じて、各地で語られてきたテーマだ。よく、ありがちなのが「富士山が見える」という意見。ところが、首都圏だけでも「富士山が見える」という地域は沢山ある。例えば、神奈川県二宮町。美しい富士山が見える。相模湾に面していて小田原市の手前。そんな説明をすると、目立たない小さな町に思える。しかし、伝える切り口を変えると、魅力的に感じてくる。
「5.15事件の凶弾に倒れた犬養毅首相や三越の創始者日比翁助氏の別荘もあった元別荘地」「北条政子の安産祈願が行われたといわれる場所」「大和朝廷が神社を立てた場所」「日本武尊伝説の残る場所」。そうした、地域に伝わる歴史や風土を踏まえた視点で街並みを見てみると、過去の延長線上に現在があることがわかる。海を望む見晴らしの良い場所、並ぶ広い敷地の住宅群・・・。景色とは異なり、二宮町にしかない地域の歴史の重みが見えてくる。
地域に伝わる歴史や風土(地域のDNA)を地域住民が共有すると、地域に住まう誇りが生まれる。誇りは地域アイデンティティを生み出し地域ブランドの根源になるのだ。
都市農村交流課 プロデューサー 石井和裕

別荘地を想起する二宮町内に並ぶ住宅。